エイドリアン・ニューウェイが2025年の初めにレッドブルを去ると発表したことは、F1の誰にとっても驚きではなかった。なぜなら、彼がレッドブルを去るといううわさは、クリスチャン・ホーナーを巻き込んだスキャンダルがニュースになった3月初めから流れていたためだ。
しかし、ニューウェイが19年前に加わったチームと、彼が手がけたF1史上もっとも素晴らしい勝利のためのマシンのひとつから去ることを決めた理由は、ホーナーの一件のせいだけではない。それは確かに要因だった。ニューウェイは非常に厳格な価値観を持っているし、レース以外の状況がチームの運営を阻む状況を好まない。しかし、それは決定的な要因ではなかった。
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いまから少し前、ニューウェイは最後に契約を更新したときに、レッドブルを去ることは彼にとって自分の家族を離れることと同じであり、他のF1チームで働くことは考えていないと語った。しかしその契約が締結され、その言葉が伝えられて以降、多くのことが変わった。ニューウェイは、今からわずか8カ月後に他の場所で働き始めることができるように、“ガーデニング休暇”なしでレッドブルから早期離脱するための交渉ができるほどの材料を手に入れることになった。
まず第一に、ニューウェイのように非常に発達したエゴを持つ人々にとってとても重要なことだが、この温厚なイギリス人エンジニアはレッドブルの上層部、とくにホーナーから過小評価されていると感じていた。ここ数年、ホーナーは製造された過去数台のマシンにおいてミルトンキーンズの技術スタッフが素晴らしい仕事をしたことを公に称賛してきたが、ニューウェイの貢献を公然と軽視していると言えるほどだった。
ホーナーは「エイドリアン(・ニューウェイ)は週に2回出社する」と主張したり、「彼はマシンの設計に直接関与していない」とほのめかしたりしたことで、ニューウェイの感情を害した。ウイリアムズとマクラーレンで株式の提供を拒否されたのと同じやり方であり、ニューウェイはそれらのチームを間もなく離脱している。
そして、2026年からポルシェのワークスチームになるという契約を背景に、ホーナー自身が強く推し進めたパワーユニット(PU)プロジェクトのことがある。ニューウェイがホーナーの計画に賛成し、故ディートリッヒ・マテシッツを説得した決定的な会議で彼と一緒にいたのは事実だが、背後にいたのはホーナーだった。ホーナーは自分がレッドブル・パワートレインズの責任者になり、そこではオーストリア側の影響を受けないですむことを知っていたのだ。
この決断が破滅的なものであり、たとえフォードの支援があってもレッドブルが2026年の初めからメルセデス、フェラーリ、ホンダと戦うことはありそうもないことにニューウェイが気づくのに、それほど時間はかからなかった。そして、ニューウェイは勝つチャンスが充分にない限りF1に関わることに興味がないため、2026年のレッドブル・プロジェクトに対する彼の情熱は薄れ始めた。
ホーナーのスキャンダルと、彼がレッドブル辞任を拒否したこと、そしてフェルスタッペン離脱の可能性は、ニューウェイにとって最後の決め手となった。フェラーリが彼に夢の契約を提案し、ついにルイス・ハミルトンと仕事ができる可能性を提示したことで、彼の決断は基本的に下された。
最後にひとつの疑問が残る。新しい車両規則の下に誕生する2026年モデルの設計と開発においてニューウェイがどれほど重要であるかということを鑑み、彼は契約により2027年の初めまで他のチームで働くことが許されていない。その期日より1年早くチームを離れるために、彼はどのような手を打てるのか? コース外ではホーナーの思惑どおりには何も進んでいないシーズンにおいて、それは今年の次のビッグストーリーとなるだろう。
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みんなのコメント
外国の弁護士は日本のそれとはイメージが違うと思うが、ネゴシエーターの役目も大きく持っていると考える。いやむしろネゴシエーターとしての役割が主になると思っている。
法律の専門家であることはもちろんだが、有利な条件で取引をするというのも重要な役目のはず。
今回もまたその力量を発揮したということだろう。
競合にもまれるのが当たり前な諸外国にとっては普通の風景だろう。
逆に日本が、日本人が言いなりな感じがして自己犠牲を日がするような風潮がまだまだありそう。